人間が音に対して反応するとき、ま
ず一番最初に音と音の差異として認知
するものは、ヴォリュームの大小とい
ったところだろう。極端に大きな音は
人間の日常的感覚をおびやかしたりす
るものだ。でも音楽を聴く場合は別で、
聴き手は日常的感覚を微妙にズレてい
るはずである。聴く構えの有無で問題
は微妙なニュアンスを持ってくる。
 ロック・コンサートなんか、いつで
も耳が痛くなるような大きな音だ。ま
た、それでなくては面白くない。僕の
思うかぎり、音の大ささとは多分に心
理的意味合いガ絡むものだ。楽器の場
合でいえば、物理的にヴォリュームが
大きいことじゃなく、楽器の限界的な
音、これが楽器における大さな音だと
思う。演奏者達は、自分の好きな音で、
音階的なレヴェルだけじやなく、楽器
固有の常識的なひき方による常識的な
ヴォリュームじやなく、肉体を極限に
もってゆき楽器の秩序をぶちこわすよ
うな演奏をしてもらいたい。
 音楽には、言葉のついている「歌」
と楽器だけの器楽とがある。もちろん
両方とも音楽である以上、本質に変り
はないんだけど。唄における言葉はリ
ズム、ハーモニー、メロディーといっ
た、諸要素と有機的に結びついて音楽
の一部となすものだから、これは絶対
に文学における言葉とは違うものだ。
 ファッツ・ドミノは言った。「歌詞
は決してはっきり歌うべきでない。」
そしてミック・ジャガーがとても影響
されたというこの言葉の意味するとこ
ろは、すべてが一体となった音楽をや
れということではないが。ロックその
もの、基本的には、黒人音楽から歌詞
を含めすべてを一体にすることを学ん
でいるのではないか。乱暴な言い方に
なると、さまざまな音と重なって「ヴォ
ーカルがかき消されることもある。聴
き取りにくいことも多いけれど、個々
のフレイズは耳に入って印象に残る。
そのフレイズの与えるイメージがキー
になり、主体のメッセージが伝わって
くる。それでいいと思う。また、聴き
手による歌詞がわかるということは、
その歌詞の使用している言語が理解で
きるかどうかとは別の事柄である。そ
れは日本語でも英語の場合でも同じこ
とである。それに先程言ったように歌
は文学ではないからだ。歌い方や歌い
まわしの端々にこめている無限のニュ
アンスが、一つ−つの言葉のニュアン
スと結びつかない以上だめだと思う。
そう考えると歌詞がわかるといえば、
母国語以上にまず無理であるような結
論が出る。でも、そう難いことはヌキ
にして、リズムに合せケツでも振って
踊りながら聞いた方が、音楽の本質に
近づいていると思うね。陽気に音楽を
楽しんだ方がやはりいいと思う。単純
に率直にね、これが一番だね。
 反体制的ROCK=何々と声もある
が、ロックもただ音楽としての表現で
しかないと思うし、現実と幻想とわか
たれる表現領域をしっかりつかんでお
くことが大切だと思う。そして音楽は
たとえどんな主題を付与されようとも、
音によって表現される限り、音楽とし
て幻想領域に属するしかありえない。
 一つ一つのレコードは一体どんな意
見をもって僕の前に存在するのだろう。
僕の内部にだけ、音楽の記憶を形づく
るだけなのだろうか。ただ判っている
ことは、レコードは生演奏と違うとい
うこと。レコードは二流のメッセージ
なのだ。レコードに出来るだけ近くな
って演奏をやってる人達っている、そ
ういうのって逆に規制するレコードの
もつ恐ろしさだね、ほんと。
 大切なのは粘り強い演奏活動だとい
うことだ。コンサートやレコードは、
日常的活動とのダイナミックな対応関
係を持っていなければならない。それ
が欠落すれば、商品の種類の増加と拡
大を意味することにとどまる。メデイ
アを利用することが、遂にメディアに
よって利用されることへと転倒させら
れる。そうなっては悲しすぎる。
 難いことを書きすぎました。この辺
で楽に北九州の音楽状況について語ろ
う。
 小倉に常時ロック・バンドの演奏が
見れる“BOX”という所がある。し
かし、地元バンドによる演奏だけでは、
客の入りが悪いようだ。お気に入りの
バンドしか見ない、またお気に入りの
バンドカラーに合せた、異様な連中
を最近では、見かけることが少ない。
どのバンドの演奏に出かけても、客の
大半は、いつもの顔ぶれというところ
だ。BOXに行けばいつでも見られる
という馴れが出てきたのか、それとも
熱くさせられるパント達がいないのか。
そうした風景を成り立たせているもの
は?この意味(コミュニケーションの
あり方が問われる)を問い直さなけれ
ばいけないと思う。それは、壁に向か
ってポールを投げ続ける孤独なゲーム
にも似ている。本当は側への方向づけ
こそがなさなければいけないのに−。
 最後に、今、僕の気に入っているバ
ントを紹介しときます。平均年齢18才
という、アップ・ビート・アンダ−・
グラウンド。演奏スタイルはモロ、ラ
モーンズというふんいきで、ゴキゲン
です。ポップ感覚溢れる、ロックン・
ロ−ル・バンド、J・J・アンド・テ
ィアーズ、8月からは、J・Jヌキの
ティアーズでの演奏も見せてくれると
いう。先が楽しみなバンド。たのきん
の「ヨツちやん」とも見事セッション
をやってのけた、ハイヒール、etc。
それから博多のバンド、フルノイズ、
彼らは最高だね。モタンドールズ。
 博多のバンドも小倉にどんどん演奏
に来てもらいたい。また、小倉のバン
ドは博多へと。小倉と博多は隣町だが
らね。

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